Ｅｘｐｅｒｉｍｅｎｔｓ　ａｎｄ　Ｏｂｓｅｒｖａｔｉｏｎｓ　ｏｎ　Ｄｉｆｆｅｒｅｎｔ　Ｋｉｎｄｓ　ｏｆ　Ａｉｒ

第４節　動物の呼吸または腐敗によって汚染された空気について
　
　ろうそくが一定量の空気の中で一定時間しか燃え続けないというのは、動物がその空気の中で一定時間しか生きられないという事実と同じくらいよく知られている。しかし、動物が死ぬ原因が、同じ条件下で炎が消える原因と同じくらい解明されていないことは確かである。そして、一度でも動物の呼吸によって有害となった空気を、再び呼吸に適した状態に戻す方法は、これまで発見されていないと私は思う。そして、ある量の空気が動物の呼吸によって使い尽くされ、有害なものになってしまった場合、それを再び呼吸に適した状態に戻す方法は、私の知る限り、まだ発見されていない。しかしながら、炎を支える空気を再生するのと同様に、呼吸に適した状態に戻すための、自然の中の何らかの仕組みが存在することは明らかである。さもなければ、大気全体がいずれは動物の生命維持に適さないものとなってしまうはずだが、今のところ大気が呼吸に適さなくなってきていると考える理由は全くない。とはいえ、私はこの重大な目的のために自然が用いている方法のうち、２つの手段を発見したと自負している。他にどれほど多くの方法が存在するかは分からない。
　動物が、他の動物が呼吸によって生きられる限り生きた後に死んだ空気の中に入れられて死ぬとき、その死因は、かつて空気中に存在すると考えられていた「生命の糧（ｐａｂｕｌｕｍ　ｖｉｔa）」が欠如しているからではなく、むしろその空気が肺を刺激する何らかの物質で満たされているためであることは明らかである。というのも、そうした場合、動物はたいてい痙攣を起こして死に、時には、たった一度の吸入だけで回復不能となるほど突然影響を受けることもあり、その直後に取り出され、あらゆる蘇生手段が講じられても助からないのである。
　彼らは、他の種類の有害な空気の中でも同様の影響を受ける。たとえば、固定空気（ｆｉｘｅｄ　ａｉｒ）、可燃性空気（ｉｎｆｌａｍｍａｂｌｅ　ａｉｒ）、硫黄の蒸気で満たされた空気、腐敗物で汚染された空気、鉄粉と硫黄の混合物を長時間置いた空気、木炭が燃焼した空気、金属が焼かれた空気、亜硝酸性空気（ｎｉｔｒｏｕｓ　ａｉｒ）などがある。痙攣は、筋肉の最も強い随意運動よりもはるかに大きく生命力を弱らせ、消耗させることが知られているので、これらの全身的な痙攣は、いわゆる「生命力（ｖｉｓ　ｖｉｔa）」のすべてを一度に消耗させてしまうのかもしれない。少なくとも、肺が完全に動けなくなり、動物が窒息するか、呼吸ができずに回復不能になるまでには至ると考えられる。
　私がこれらの実験においてよく使用しているネズミのような動物が、この刺激の最初の衝撃に耐えられたり、徐々に慣らされていた場合には、他のネズミが即座に死ぬような空気の中でもかなりの時間生き続けることができる。私は何度も経験しているが、一定量の空気の中に複数のネズミを閉じ込めたとき、実際に彼らが生きていた時間の半分にも満たない時間しか経っていなくても、新たに別のネズミをその空気中に入れると、そのネズミはたちまち痙攣を起こして死んでしまうのだ。したがって、「ブラックホール事件（※）」の実験が再び行われるとすれば、最初にその場に入った人間の方が、最後の時間帯に入った人よりも生き残る可能性が高いのは明白である。

※「ブラックホール事件」とは、１７５６年にインドのカルカッタ（現・コルカタ）で起きた、非常に狭い空間に多人数が押し込められて多数が窒息死した事件のことを指す。
　私はまた、若いネズミのほうが、同じ量の空気に閉じ込められたときに、老いたネズミや成長したネズミよりも常にはるかに長く生きることができる、ということを観察した。あるとき、若いネズミが６時間も生き延びたのに対し、同じ条件下で老いたネズミは１時間も持たなかったことがあった。このような理由から、ネズミを使った実験にはかなりの不確実性が伴う。そして同じ理由で、他の動物を使った実験にも間違いなく同様の不確実性があるため、結果に絶対的に依拠するには、これらの実験を繰り返し行う必要がある。しかし、思いやりのある人なら誰でも、動物の呼吸を使った多くの実験を不要にし、空気の純度をより正確に測定する手段である「亜硝酸空気（ｎｉｔｒｏｕｓ　ａｉｒ）」の発見を、私と共に喜んでくれるだろう。これは後ほど述べることにする。
　　動物の呼吸によって損なわれた空気の性質は、自然哲学（自然科学）の中でも最も重要な問題のひとつであると、私は長らく考えてきた。そのため、これを解明するために私は非常に多くの手法を試みてきた。これらの試みにおいて、私の指針となっていたのは、実際に大気がさらされている影響を考慮することだった。そして、私の試みの中には成功しなかったものもあるが、これからこの問題の研究に努力しようとする人々には、それらが役立つかもしれないと思い、主要なものについて述べることにする。
　動物の呼吸によって空気に満たされる有害な蒸気（悪臭）は、淡水や海水の中に静置しておくだけでは吸収されない。私はそのような空気を淡水中に数か月間保持したことがあるが、空気は改善されるどころか、かえってさらに致死的になったように思われ、後述する方法によって空気を回復させるのに、最近有害化した空気よりも長い時間を要するほどだった。
　私は何時間もかけて、この空気を水中で一つのガラス容器から別の容器へと注ぎ移し、時には手で耐えられる限り冷たく、あるいは熱い水を使い、また実験の途中でガラス容器を何度も拭いて、そこに付着して悪臭を放っていた有害物質を取り除こうと試みた。しかし、これらすべての方法は、一般に目立った効果を示さなかった。この状況下で空気が受ける運動も、明らかに効果がなかった。当時の私は、空気を高いガラス瓶に入れて手で振るという、シンプルながら非常に効果的な水中攪拌の方法をまだ思いついていなかったのである。この種の空気は、光にさらしても、また開放空間で薄いガラス瓶に閉じ込めて数か月間放置しても、改善されることはない。他にも私は様々な蒸気、特に腐敗に対して抵抗力があるとされる物質から発せられる蒸気を用いて、多様な実験を試みたが、この種類の空気の有害性を改善することはできなかった
　私は、皇帝協会（Ｉｍｐｅｒｉａｌ　Ｓｏｃｉｅｔｙ）の記録で、ペストが襲わなかったある村に大きな硫黄製造所があったという記事を読み、それをヒントに、この種の空気（あるいは後述するように、腐敗によって汚染された空気と同一のもの）を燃焼した硫黄の煙で燻蒸してみたが、やはり効果はなかった。
　かつて私は、空気中の亜硝酸（ｎｉｔｒｏｕｓ　ａｃｉｄ）が私が求めていた一般的な回復因子であるかもしれないと考えた。その推測は、硝石（ｓａｌｔｐｅｔｒｅ）から抽出した空気中でろうそくが燃えることを見て、支持された。そこで私は、焦点を合わせた太陽光（ｂｕｒｎｉｎｇ　ｇｌａｓｓ）やその他の方法を使って、この有害な空気に硝石の蒸気を含ませようとかなりの時間を費やした。また同じ目的で、亜硝酸の煙（ｓｍｏｋｉｎｇ　ｓｐｉｒｉｔ　ｏｆ　ｎｉｔｒｅ）を空気中に導入したが、どちらの方法も全く効果がなかった。
　熱の効果を試すために、私はネズミが死んだ空気をタバコのパイプの茎の先に結びつけた膀胱（袋）に入れ、もう一方の先には空気を慎重に押し出す別の膀胱を取り付けた。そして、茎の中央部分を、風を強く送った炭火の火鉢の中に入れ、膀胱を交互に押すことで空気をパイプの熱せられた部分に何度も通した。また、火のそばの水の中でこの種の空気を非常に熱くしたこともある。しかし、どちらの方法も効果はなかった。空気の有害な性質が土に吸収され、そこから植物の根に栄養となる腐敗物質が供給されるかもしれないと考え、ネズミが死んだ空気を瓶に入れ、その半分に細かい庭の土を詰めて保管した。しかし、２ヶ月間そのままにしておいても、空気は良くなることはなかった。
　また、一度考えたのは、いくつかの種類の空気は膀胱やよく栓をした瓶、あるいはすり合わせの栓で閉じた容器に入れても、普通の空気から長く隔てられないことから、この有害な空気と普通の空気の親和性が非常に高く、水を間に挟んでいても混ざり合うのではないかということだった。水は、隣接するあらゆる種類の空気から何らかの影響を受けると思われるため、ある空気から水に何かが移り、水から別の空気に移ることが続くのではと考えたのだ。しかし、この方法でどんな種類の空気も普通の空気と混ざり合うことができるという結論を出す理由は見つからなかった。
　ネズミが死んだ空気、ろうそくが燃え尽きた空気、そして可燃性の空気を、私が作れる限り最も薄い水の仕切りで普通の空気から隔てて保管した。そうすれば、もし私が注意を払わなくても、１、２日で蒸発してしまうことはないだろうと思った。しかし、１か月から６週間経っても、これらの空気には何の変化も見られなかった。可燃性の空気は依然として可燃性を保ち、以前に他のネズミが死んだ空気ではネズミはすぐに死に、ろうそくは以前に燃え尽きた場所では燃えなかった。
　動物や植物の腐敗によって汚染された空気は、動物の呼吸によって有害となった空気と同じものであるため、これらの空気に関して行った観察について述べてから、それらを回復させる方法について説明しようと思う。
　これら二種類の空気が実際には同じものであると私が結論づけるのは、いくつかの顕著な共通の性質を持ち、私が観察できた範囲では何一つ異なる点がないからだ。両者は等しく炎を消し、動物にとって同様に有害であり、同じように嫌な臭いを放ち、同じ方法で回復する。肺を通った空気が動物の腐敗した空気と同じものであることから、肺の一つの役割は腐敗性の臭気を体外に運び出すことであり、それがなければ、生きている体も死体のようにすぐに腐敗してしまうかもしれない。
　ネズミがある一定量の空気中で腐敗すると、最初の数日間は空気の量が一般的に増えるが、その後数日経つと縮み始め、気温が比較的暖かければ約８〜１０日で元の量の６分の１か５分の１ほど減少する。この期間を過ぎても減少が見られなければ、水を通すだけで確実に減少が感じられる。私は一度か二度水を通しただけでほぼ全体の減少が起こるのを見たこともある。同様に、動物ができるだけ長く呼吸した空気でも同じことが言える。また、ろうそくが燃え尽きた空気も、この方法でほぼ必ず減少させることができる。
　これらすべての過程は、前に述べたように、空気の複合体の一部（それは空気の構成成分の一つである固定空気と思われる）を放出させる作用があるように見える。この成分は水と混ざりやすいため、最も効果的に混ざるには水と接触させる必要があり、特に空気の他の構成成分との結合が部分的にしか壊れていない場合は重要である。
　私は、口が水銀に浸された容器にネズミを入れ、ネズミが死んだり冷たくなった後でも空気の体積はあまり縮まらないことを観察した。しかしネズミを取り出し、空気に石灰水を通すとすぐに濁り、通常のように体積が縮んだ。
　腐敗について、死んだネズミを口が水銀に浸された容器に普通の空気と共に入れ、一週間後にネズミを水銀の中から取り出した。その際しばらくの間、空気の体積が約２０分の１ほど増加したように見えた。その後、空気は水銀の中で２日間放置されたが、目立った変化はなかった。次に水を空気に通すと、空気が吸収され始め、元の量が約６分の１減るまで続いた。
　もしこの実験で普通の水の代わりに石灰水を使っていたら、濁ったに違いない。もし石灰水を瓶に入れて水の中に置き、普通の空気が入らないようにすれば、どれほどの期間かはわからないが、石灰水のままでいるだろう。しかし、その容器の中でネズミが腐敗すると、数日で水中に石灰分が沈殿する。これは普通の空気によって沈殿した固定空気のためであり、またおそらく腐敗過程のどこかで腐敗物質から放出されるより多くの固定空気も関係しているのだろう。
　　腐敗している物質から放出される空気は、場合によっては主に固定空気であり、そこに普通の空気を減少させる力を持つ他の何らかの揮発性物質が加わっているように思われる。以下の実験における真の腐敗臭（腐敗性揮発物）と固定空気の類似性は、私が考え得る限り最も決定的なものであり、予想以上に非常に大きいものだった。
　私は死んだネズミを高さのあるガラス容器に入れ、残りの部分を水銀で満たし、その容器を逆さまにして水銀の入った壺にセットした。そして約２か月間放置した。その間にネズミから発せられる腐敗性揮発物が容器全体を満たし、水銀の表面に浮かんでいた溶けた血液の一部が析出し始めた。次に、同じ大きさと形の別のガラス容器に、私が作れる限り純粋な固定空気を満たし、両方の容器を同時に石灰水にさらした。両方の場合で水は同様に濁り、両方の容器で水の上昇速度も高さもほぼ同じであり、吸収されなかった空気の量もほぼ同じだた。
　しかし、この２種類の空気のうち一方は非常に甘く快い香りがし、もう一方は耐え難く不快な臭いを放っていた。また、一方は混合された普通の空気の量を増加させるものだったが、もう一方は減少させるものたった。これは少なくとも、もしネズミ自身が普通の空気の中で腐敗していた場合には起こる結果だろう。
　これらの状況について述べると、腐敗したキャベツ（生でも茹でても）は、腐敗した動物性物質とまったく同じ方法で空気を汚染する。このように汚染された空気は、その体積が同様に縮小し、炎を同様に消し、動物に対しても同じく有害だ。しかし、加えられる熱の程度がかなり高い場合、動物性と植物性では空気への影響が大きく異なる。例えば、生または茹でた牛肉や羊肉を火に非常に近づけて、その熱が血液の温度に等しいかそれ以上になるようにすると、１?２日でかなりの量の空気が発生する。そのうち約７分の１は水に吸収されるのを私は一般的に確認しており、残りのすべては可燃性だった。一方、同じ条件下で植物性のものから発生する空気は、ほとんどが固定空気であり、可燃性のものは全くない。この実験は何度も繰り返しており、全過程を水銀の中で行ったため、普通の空気や水が実験対象の物質に触れることはなかった。したがって、水銀に吸収されたり、物質自身に再吸収されたりするもの以外の空気や揮発物の発生は明確に観察できた。
　これらの条件下では、植物性のものはその温度で抽出可能な空気のほぼ全てを放出するが、動物性のものはほとんど変化せずに、数週間にわたって何らかの空気や揮発性物質を放出し続ける。しかし、興味深いのは、牛肉や羊肉の一片を水銀に浸し、この温度で保持すると、可燃性が主で、腐敗臭が（少なくとも１?２日間は）ほとんどしない空気を放出するのに対し、同じように処理したネズミは、明らかに腐敗臭のある本来の腐敗性揮発物を放出することだ。
　腐敗性揮発物が水に混ざることは、次の実験から明らかだ。ネズミを水で満たした瓶に入れ、その口を逆さにして別の水の入った器の中に立てると、かなりの量の弾力のある物質（つまり空気）がすぐに発生する。ただし、天候が非常に寒くて腐敗が抑制される場合を除く。しばらくすると、水は非常に悪臭の強い不快な匂いを帯びる。これは、腐敗性揮発物が水に浸透し、周囲の空気にも影響を与えていることを示している。そしてその後は空気の量が増えないことが多いため、その物質は生成されると同時に水を通じて排出されているようだ。
悪臭は、それが固定空気ではない十分な証拠だ。なぜなら、固定空気は発酵によっても硫酸によって石灰石から抽出されても、非常に心地よい風味があり、口だけでなく鼻にも心地よい刺激を与えるからだ。この刺激は適度な範囲で非常に快適であることを、実験してみれば誰でも確認できる。腐敗空気で満たされた水が交換されると、ネズミが腐敗性揮発物を放出し続けていても、１?２日でその水に吸収されていた腐敗空気の大部分はなくなる。新しい水が飽和状態になると、再び悪臭が強まり、水面の腐敗空気の量も以前のように増加する。
　私はこの方法で腐敗空気を放出し続けるネズミを数ヶ月間観察した。１１日間閉じ込められた空気中で腐敗していたネズミからは、観察のため水で満たした瓶に入れる前に、水に容易に吸収されない６オンス（約１７０ｍｌ）の空気が発生しているように見えた。
　このように水中に置かれた腐敗したネズミから発生する空気は、一般の空気が腐敗によって汚染されたものと同様に、炎を消し、動物に有害だが、より強いわけではない。この腐敗空気（水に溶けにくいもの）を大量に集めるのは非常に困難で手間がかかる。なぜなら、集めた空気の大部分が、それを保存している水に吸収されてしまうからだ。しかし、その割合がどれほどかはまだ調べていない。おそらく、水に容易に吸収されない固定空気の割合と同じくらいであり、したがって、最初に「腐敗性揮発物」と名付けたこの空気は、固定空気と燃焼性物質（この過程や他の過程で一般の空気を減少させるもの）が混ざったものだと考えられる。
　腐敗物質が一般の空気を減らすことはあるが、腐敗空気と一般空気を混ぜただけで同じ効果が起きるとはまだ見つけていない。しかし、これまでの実験方法では、腐敗空気を水の層を通過させる必要があり、その水が一般空気を減少させる燃焼性物質を即座に吸収してしまうためかもしれない。動物や植物の腐敗で汚染された空気の中でも、昆虫の多くはまったく普通に生きている。例えば、ハエや蝶で実験を何度も試みた。アブラムシも、このような空気の中で育つ植物の上で、外気中と同じように繁栄する。私は何度も、腐敗空気中で育つ植物からアブラムシの大群を払い落とすために植物を取り出さなければならなかった。それでも、彼らは巧妙に隠れ、その環境で非常に速く繁殖するため、植物を完全に虫から守ることはほとんどできなかった。
　腐敗の臭いが強く水越しに感じられるほど新鮮に腐敗した空気では、ミントの小枝を入れるとすぐに枯れ、葉が黒くなった。しかし、すぐには枯れなかった場合、その植物は驚くほどよく育った。動物にとって致命的な空気でこれほどまでに植物の成長が旺盛な状況は他に見たことがない。
　腐敗空気が充満した瓶の中で混み合っていた植物の葉はすべて生き生きとしており、新しい芽は様々な方向に伸び、同じ環境で普通の空気にさらされて育った類似の植物よりもはるかに早く成長した。この観察から私は、植物は動物の呼吸と同じ方法で空気に影響を与えるのではなく、むしろその逆の働きをしていると結論づけた。つまり、動物が生きて呼吸したり、死んで腐敗したりすることで空気が有害になった場合に、植物はその有害な空気を浄化し、空気を清浄で健康的な状態に保とうとするのだ。
　このことを確かめるために、私はまずマウスが呼吸し、死んでしまうことで完全に有害になった空気を取り、それを二つに分けた。そして、そのうちの一方（ガラス瓶に入れ、水の中に立ててあったもの）にミントの枝を入れた。これは１７７１年８月の初め頃のことで、８日か９日後に、ミントの枝が育っていたその部分の空気の中ではマウスがまったく問題なく生きていたのに対し、同じ元の空気のもう一方の部分（まったく同じ環境に置いてあったが、植物は育てていなかった）では、マウスは入れた瞬間に死んでしまったことを私は発見した。この実験は何度も繰り返した。時には動物が呼吸し、死んだ後の空気を使い、また時には植物や動物の腐敗によって汚染された空気を使ったが、だいたい同じような結果が得られた。かつて、私は一匹のネズミを、すでに有害になっていた空気の中で生かし、そして死なせた。この「腐敗性の発散物（ｐｕｔｒｉｄ　ｅｆｆｌｕｖｉｕｍ）」は、おそらく固定気体（炭酸ガス）と、他の過程で普通の空気（酸素）を減少させるフロジストン物質（燃素物質）が混ざったものと同じものだと考えている。
　私が用いた植物が明らかに腐敗した空気の中で成長し繁茂すること、腐敗物質が植物の根にとって適切な栄養源であることがよく知られていること、そして植物は根からだけでなく葉からも栄養を取り入れることが確かであることを踏まえると、植物の葉を通じて腐敗した空気中の有害な成分（腐敗性の蒸気）がある程度取り除かれるというのは、極めてもっともらしいことである。そのため、植物は空気をより呼吸に適した状態にしているのだと考えられる。
　年末に近づくにつれ、この種の実験のいくつかは以前ほど良い結果を示さなくなり、回復した空気が元の有害な状態に戻ってしまう事例が見られた。したがって私は、この種の有害な空気を回復させる植物の効力についての判断を保留し、実験を繰り返してより注意深く観察する機会が得られるまで、結論を出さないことにした。そこで私は、１７７２年の夏に実験を再開し、すぐに、腐敗した空気が植物の働きによって回復されるという、疑いようのない証拠を得た。この事実はある程度重要であり、この種の空気のその後の状態の変化もやや注目に値するため、いくつかの事実について、かなり詳しく述べる必要があると考える。
　私が最初に行った実験の対象となった空気は、６月２０日に数匹のネズミがその中で死ぬことによって、非常に有害な状態にされていた。この空気の一部をほぼ満たしたガラス瓶にミントの若芽を入れ、同じ空気のもう一部は同じ環境下で小瓶に保管しておいた。そして同月２７日（それ以前ではなく）に、どちらの空気も試すため、２と１／２オンスの容量を持つガラス容器にそれぞれの空気を満たし、そこにネズミを導入して、以下の事実を記録した。
　ミントが育っていた空気を瓶に満たして実験したところ、その中に入れた大きなネズミは、不快の兆候を示すまでに５分間生きていた。その後、ネズミを取り出してみると、最初に入れた時と同じくらい元気で力強かった。それに対して、同じ空気を植物なしで瓶に保存していたものでは、もっと若いネズミが２?３秒しか生きておらず、取り出した時にはすでに死亡していた。それ以後、一度も呼吸せず、すぐに動かなくなった。その３０分後（その時間があれば、仮に最初の実験でネズミがダメージを受けていても回復しているはずと考えて）、同じ大きなネズミを再び別の空気容器に入れた。しかし、今回は１秒も経たないうちに取り出したにもかかわらず、回復は困難で、ほぼ１分間その場から動けなかった。２日後、同じネズミを同じ量の通常の空気（常用の空気）に入れてみると、７分間は何の不快な様子も見せずに過ごし、その後さらに３分経過したあたりで非常に落ち着かない様子を示したので、私はネズミを取り出した。全体的に見て、回復された空気（植物の作用で「浄化」された空気）は、通常の空気の約４分の１ほど劣っている、つまり完全な空気の約７５％程度の健康性であると結論づけた。また、このことは、亜硝酸性空気（ｎｉｔｒｏｕｓ　ａｉｒ）を使った試験でも同様に確認された。
　この有害な空気の瓶の中でミントが育っていた７日間で、３本の古い茎がそれぞれ約３インチ（約７．５ｃｍ）伸び、さらにいくつかの新芽もその間に現れた。ミントがこの状態になってから３日か４日ほど経った頃、フランクリン博士とサー・ジョン・プリングルが私のもとを訪れ、この閉ざされた環境下での植物の力強い生育ぶりと、著しく健康そうな外見に注目していた。
　同じ月の３０日、あるネズミが、以前に他のネズミの呼吸によって非常に有害になった空気（ほぼ１年前のもの）を使った実験で、１４分間自然に呼吸を続け、最後の２オンス半の空気になるまで、あまり苦しそうな様子を見せることなく生き延びた。この空気は今月の１９日には非常に有害であることが確認されていたが、その後１１日間、植物が中で（それほど良好ではないが）育っていたため、その試験を行うのをこれまで控えていた。なお、回復されたこの空気は、硝酸空気（ｎｉｔｒｏｕｓ　ａｉｒ）との混合によって、ほぼ通常の空気と同じ程度の反応を示した。
　「このようにして、腐敗した空気が植物の成長によって比較的簡単に呼吸に適した状態にまで回復されたことから、私は同じ方法によって、時間をかければさらに完全に空気が回復され、ろうそくの火も灯るようになるのではないかと期待した。その目的で、翌８月中旬まで、植物をこの空気を含む瓶の中で育て続けたが、古くなったり腐った葉を取り除くという基本的な注意を十分に払わなかった。しかしながら、植物は全体としてよく成長し、見た目も良かったため、私は空気が常に改善され続けているものと疑わなかった。ところが、８月２４日になって非常に驚いたことに、一方の瓶の空気は悪化していなかったものの全く改善もされておらず、もう一方の瓶では、以前よりもはるかに悪化しており、ネズミは数秒で死んでしまうほどであった。さらに、この空気は、以前のように硝酸空気と反応して泡立つこと（発泡）もなかった。
　同じ植物が腐敗空気をある程度までしか回復できないのではないか、あるいは植物が成長のある段階で逆に有害な傾向を示すのではないかと疑い、私は古い植物を取り除き、新しい植物をその場所に置いた。すると、７日後には空気が元の健康的な状態に回復していることが分かった。この事実は非常に注目すべきものであり、植物の原理に関してさらなる光を投げかける可能性があるため、さらに詳しい調査に値すると私は考えている。もっとも、これは単発の事例ではなく、前年にも同様の例をいくつか経験していた。ただ、同じ処置を継続していたにもかかわらず空気の質が悪化するというのはあまりにも奇妙に思えたため、そのようなことが起きたときには、私はいつも『以前の回復状態を確認する際に十分な注意を払っていなかったのだろう』と結論づけていたのである。
　植物が呼吸によって損なわれた空気を完全に回復させる能力をもつことは、私自身の肺を通過した空気がこの方法によって完全に回復され、再びロウソクが燃えるようになった（それ以前には炎が消えていた）のを確認したことから、確実に推論できると思う。この元の空気の一部は依然として炎を消す状態であったため、効果は明らかであった。このような例は、１７７１年に一度起きており、そのときは７月２５日から８月１７日までミントの枝がその種の空気の入った瓶の中で育っていた。また、１７７２年７月７日に行った別の試みでも同様の成果が得られ、その場合は６月２９日から植物が育っていた。この効果がミントの葉自体の「効能」によるものではないことも確かめた。というのも、私はそのような空気の中でミントの葉を何度も交換しながら一定期間置いてみたが、空気に目立った変化は見られなかったからである。
　このように、植物が成長している状態で空気を部分的に回復させるという証拠は、たとえそれが閉ざされた不自然な環境であったとしても、動物の呼吸や、植物・動物の大量の物質の腐敗によって絶えず大気に与えられる損傷が、少なくとも一部は植物界によって修復されているということを、非常にもっともらしく思わせる。
　そして、上記の原因によって毎日膨大な量の空気が汚染されているにもかかわらず、地球上には植物が無数に繁茂しており、それぞれがその性質に適した場所で成長し、吸収と放出の両方の力を十分に発揮できる環境にあることを考えれば、その影響力は決して小さくなく、この害に対する十分な対抗手段となっている可能性が高いと考えざるを得ない。
　私がすでに述べたように、非常に有害な空気の中で植物が非常に元気に育っているのを見たフランクリン博士は、この実験結果に大きな満足を示してくれた。彼にそのことを手紙で知らせたところ、彼の返事には次のように書かれていた。

『植物界が、動物によって損なわれた空気を回復させるというのは、理にかなった仕組みのように思えるし、他の自然の体系とも整合しているようだ。たとえば火は、世界中で水を浄化している。火は水を蒸発させて蒸気にし、それを雨として降らせることで蒸留によって浄化する。また、それを流動状態に保ったまま雨水を地面に浸透させてろ過することでも浄化する。私たちはすでに、腐敗した動物性物質が土に混ぜられて肥料として使われることで、甘い野菜に変化することを知っていたが、どうやら同じように、空気に混ざった腐敗物質も植物によって良い方向に作用するらしい。ミントが腐敗した空気の中であれほどよく育つという事実は、植物が空気に何かを“加える”ことで空気を良くしているのではなく、空気から何かを“取り除く”ことで空気を改善していることを示しているように思える』。

そして彼は続けてこう述べている。『これは、最近の園芸の改良に伴って、家の近くの木々を“不健康だ”という理由で伐採するという風潮に対して、少しは歯止めになることを願っている。私の長年の観察からしても、森の空気が健康に悪いということは決してない。なぜなら、我々アメリカ人は、どこでも森の中に田舎の住まいを構えており、世界中のどの民族よりも健康で、かつ子だくさんだからだ』。
　可燃性空気を、水を満たした槽の中で絶えずかき混ぜることで空気を取り除き、完全に無害なものにした後、私は他の種類の有害な空気も同じ方法で回復できるだろうと考えた。そして、まさにその通りであることが、１年以上も経過した腐敗空気に対してさえ確認された。ここで一度だけ述べておくと、この方法は、私が試したどんな種類の有害な空気にも、これまで一度も失敗したことがない。それは、木炭を燃やした煙で汚染された空気、焼かれた金属の蒸気に汚染された空気、鉄粉と硫黄の混合物が置かれていた空気、白鉛と油で作られた塗料が置かれていた空気、あるいは亜硝酸空気との混合によって減少した空気などだ。この処理法が、亜硝酸空気そのものに及ぼす顕著な効果については、適切な箇所で説明することにする。
　この処理（空気の撹拌）が、空気を抜いた水中で行われた場合??例えば、エアポンプで空気を抜いた水、煮沸した水、あるいは蒸留水、もしくは新しい雨水を用いた場合??撹拌によって空気は常に減少する。これは確実に、実験を行う上で最も正当な方法だ。一方で、もし新鮮な井戸水（ポンプで汲み上げた水）を用いた場合、撹拌によって空気は常に増加する。これは、水中に含まれていた空気が放出され、瓶の中の空気と結びつくためだ。この場合でも、空気は常に回復（浄化）されてきた。しかし、この場合には、より健康的な成分が加わったことによって改善が起きたのではないかという疑いが生じるかもしれない。これらの撹拌は、口の広い瓶の中で行われ、また大きな表面積を持つ槽の中で行われたため、有害な蒸気（たとえそれが何であれ）は、まず水に吸収され、そこから一般の大気中に放出されたものと私は考える。実際、いくつかのケースでは、この処理中に不快な臭いがしたことから、それが十分に示されていた。
　私がこれらの実験を行った後、ある才気ある医師であり哲学者でもある人物が、次のような実験を行ったことを知らされた。すなわち、同じ大きさの別の鶏が１時間しか生きられなかった量の空気の中で、１羽の鶏を２４時間も生かし続けたというのだ。これは、その鶏が呼吸する空気を、比較的少量の酸性水を通して循環させるという工夫によって成し遂げられた。その水の表面は外気にさらされていなかった。さらに、水が酸性でなかった場合でも、空気をその水を通してから鶏に吸わせることで、空気を直接吸わせた場合よりもはるかに長く鶏が生きられたのだ。
　私自身がこの件について行った観察からだけでは、そこまでの結論には至らなかったであろうと考え、私は、ネズミが死んだ空気の一部を取り出し、それを蒸留水（空気の約５倍量）で非常に強く攪拌した。これは、以前に「固定空気（固定空気＝現在でいう二酸化炭素）」を水に溶かすために行った方法と同様の操作だった。しかし、この操作を長時間続けても、その空気の性質に目立った変化は見られなかった。私はまた、ポンプ水（井戸水）を用いて同じ操作を繰り返したが、それも同様に効果はほとんど見られなかった。ただしこの場合、空気は首の狭い小瓶の中で攪拌されたとはいえ、水が入った皿の表面はかなり広く、大気にさらされていたため、このことが実験を多少有利にした可能性がある。
　このような空気の攪拌方法の効果をより正確に判断するために、先の方法ではまったく改善できなかった非常に有害な空気を、水の入った槽に立てた開放瓶の中に移した。そして、空気が約３分の１に減るまで攪拌を続けたところ、その空気は、ろうそくが燃え尽きた後に残る空気よりも良好であることが、亜硝酸空気（ｎｉｔｒｏｕｓ　ａｉｒ）による試験によって明らかになった。また、２．５オンスのこの空気の中にネズミを入れたところ、１５分間生存し、最初の１０?１２分間は目立った不調を示しませんでした。
　腐敗した空気を回復させる能力を高めるために、水に酸を加えることが有効かどうかを調べるために、私はまず非常に強い酢が入った小瓶の中で腐敗した空気を攪拌し、次に水で半分だけ希釈したアクアフォルティス（硝酸）でも同様に攪拌した。しかし、これらのいずれの処理でも空気の状態はまったく改善されなかった。攪拌は一日中、間を空けて繰り返し行い、さらにその状態のまま一晩放置したにもかかわらずだ。
　しかしながら、これらの実験においては、水が有害な蒸気（ｎｏｘｉｏｕｓ　ｅｆｆｌｕｖｉａ）のある程度の量を吸収し保持した後に、それらが外気へと放出されたと考えられるため、海や大きな湖の水の攪拌が、大気の浄化にいくらか寄与している可能性は十分にあると私は考える。そして、水中に含まれる腐敗物質は、水生植物によって吸収されるか、あるいは何らかの別の方法で沈殿するのかもしれない。
　これまで述べた複数の実験によって、本当の意味での腐敗の蒸気（ｐｕｔｒｉｄ　ｅｆｆｌｕｖｉｕｍ）は「固定空気（ｆｉｘｅｄ　ａｉｒ）」とはまったく異なるものであることが分かり、またマクブライド博士の実験によって、固定空気は腐敗を抑える働きがあると知ったことで、私はある仮説を思いついた。それは、固定空気と腐敗により汚染された空気は、それぞれ単独では等しく有害であるにもかかわらず、両者を混合するとお互いの害を打ち消し合い、健全な空気のような性質を示すのではないかというものである。そして私は、この仮説を支持する数多くの事例――５０?６０件ほどの実験――に出会った。そこでは、呼吸や腐敗によって極めて有害となった空気に、約４倍量の固定空気を加えることで、その空気が「清められ」、その後、ネズミがその空気中で非常によく生きられた。場合によっては、通常の空気中とほとんど同じくらい長く生存した。実際、古い腐敗空気をこの方法で回復させるのは、確かにより困難であることが分かった。しかし、２種類の空気を長期間――つまりおよそ２?３週間――一緒に置いておいた場合には、回復にほとんど失敗することはなかった。
　私が、これらの場合に空気が回復したのが固定空気（ｆｉｘｅｄ　ａｉｒ）の効果であると断定しない理由は次の通りだ。
　私がその混合物を試したとき、２種類の空気を何度か水を通して別の瓶に移すというかたちでかなり強く攪拌したので、攪拌そのものに別の効果があった可能性を排除できなかったのだ。しかし、その後の実験で、固定空気を加えずとも、非常に激しく、特に長時間にわたって水中で空気を攪拌することで、どんな種類の有毒な空気もある程度呼吸に適したものになることが常に確認されたため、（実際、ある特定の例では、空気を一つの容器から別の容器へ、水を通して何度も移すだけでも――固定空気を混ぜたときより長く時間をかけたが――かなり効果があった）、私はこの場合における固定空気の効果について疑念を抱くようになったのだ。また、観察結果の全体傾向から期待されるほどには、固定空気の混合が腐敗空気に効果を示さなかった例もいくつかあったのだ。
　私は常に、「固定空気の残留物（ｒｅｓｉｄｕｕｍ）はそれほど有害ではないため、それを加えることで腐敗した空気を改善する助けになる」と言われるかもしれない、ということを承知していた。しかしこの反論を退けるために、私は一度、ある一定量の腐敗空気を改善するのに十分であることが、様々な試行によって分かっていた量の固定空気の残留部分だけを混ぜてみたところ、空気の性質は目に見えて良くならなかった。
　全体として、私はこの処理（＝固定空気を加えること）が、私の行った多数の実験でこれほどまでにうまくいったのは、固定空気が呼吸や腐敗によって汚染された空気をある程度修正する性質を持っているからだと考えざるを得ない。
そしてそれは、マクブライド博士（Ｄｒ．　Ｍａｃｂｒｉｄｅ）の発見と完全に一致する傾向であり、そこから当然予想されることでもある。
　腐敗によってのみ生成された空気、すなわち水に沈めたネズミから発生した空気の残留物に、固定空気（ｆｉｘｅｄ　ａｉｒ）を混ぜることで、その空気を健全な（呼吸に適した）状態にすることができた。これは、おそらく理論的には最も有害な空気であると考えられるだろう。というのも、通常の空気でさえ腐敗によって汚染されると非常に致命的になるのだから、腐敗によってのみ生成された空気は、なおさらそうであると予想されるはずだ。だが、実際にはそれは、腐敗によって汚染された「普通の空気」（あるいは少なくとも水に吸収されない種類の固定空気）に過ぎないようであり、したがって、それを「清める」ために特別な処理は必要とされない。この事例は、「純粋な普通の空気」が、何らかの異質なものと混ざって生成された例であると考えられるかもしれない。おそらく、固定空気の残留物も同様の性質を持っており、また、特に＊＊フロギストン（ｐｈｌｏｇｉｓｔｏｎ）を帯びた硝酸性空気（ｎｉｔｒｏｕｓ　ａｉｒ）＊＊が長時間水中で激しく攪拌された場合も、同様の現象が見られるのではないかと思われる。
　固定空気（ｆｉｘｅｄ　ａｉｒ）は、混合された任意の量の腐敗空気の全体にわたって均等に拡散する。というのも、混合物を二つの等しい部分に分けたところ、どちらの部分も水を通すことで同じ割合で減少したからである。しかし、このような性質は、可燃性空気（ｉｎｆｌａｍｍａｂｌｅ　ａｉｒ）や硫黄（ｂｒｉｍｓｔｏｎｅ）が燃えたあとの空気のように、混ざり合わない種類の空気にも見られる。
　もし固定空気（ｆｉｘｅｄ　ａｉｒ）が、動物の呼吸や腐敗によって傷んだ空気を改善する傾向を持つとすれば、＊＊大量の固定空気を放出する石灰窯（ｌｉｍｅ　ｋｉｌｎｓ）＊＊は、腐敗した揮発物（ｐｕｔｒｉｄ　ｅｆｆｌｕｖｉａ）が多く含まれているであろう人口密集地の大気にとっては、その近隣にあることが健康的に有益であるかもしれない。また、私は医師たちが、多くの腐敗性疾患（ｐｕｔｒｉｄ　ｄｉｓｏｒｄｅｒｓ）において、固定空気の応用を活用できるのではないかとも思う。特に、浣腸（ｃｌｙｓｔｅｒ）によって簡単に投与できることを考えれば、固定空気はしばしば腐敗物質に直接到達する可能性がある。また、この種の空気によって腸が膨張することを恐れる必要はない。というのも、固定空気はあらゆる液体や湿った物質に容易に吸収されるからである。
　固定空気（ｆｉｘｅｄ　ａｉｒ）は、それ自体では有害ではなく、火と同様に、過剰である場合にのみ有害となるため、私はこれを吸入することを試みてもまったく危険ではないと考えている。とはいえ、この空気は、天然または人工のピュルモント水（Ｐｙｒｍｏｎｔ　ｗａｔｅｒ）、活発に発酵している飲料、または植物性の食事を通じて、容易に胃に取り込まれる。また、次のようなことも可能性として考えられる：頭部以外の全身を強く発酵している液体の入った容器の上に吊るすことで、皮膚の吸収管（ａｂｓｏｒｂｉｎｇ　ｖｅｓｓｅｌｓ）を通じてかなりの量の固定空気が体内に取り込まれるかもしれない。そして、こうした処置はある種の腐敗性疾患（ｐｕｔｒｉｄ　ｄｉｓｏｒｄｅｒｓ）に対して非常に有益である可能性がある。もし身体を完全に裸にして曝露するならば、この状況では寒さによる危険はほとんどないであろうし、空気が皮膚により自由に触れることで、より大きな効果を得られる可能性がある。私は医師ではないため、これらの提案が無作為で、あるいは風変わりであったとしても、特に責任を問われる立場ではない。
　私は固定空気（ｆｉｘｅｄ　ａｉｒ）に関する自身の観察結果、とくに腐敗性疾患においてそれを浣腸（ｃｌｙｓｔｅｒ）の形で適用するという計画を、リーズに住む才気ある外科医ヘイ氏（Ｍｒ．　Ｈｅｙ）に伝えた。すると、ちょうどそのとき彼がその治療法を試す機会に恵まれる症例が現れたのだ。彼はこの方法を、患者を診ていた２人の医師、ハード博士（Ｄｒ．　Ｈｉｒｄ）とクラウザー博士（Ｄｒ．　Ｃｒｏｗｔｈｅｒ）に伝えたところ、両者ともこの案を承認し、実際に治療が行われた。
その方法とは：
固定空気を浣腸として使用すること　
同時に、固定空気を多量に含んだ液体を患者にたっぷりと飲ませること

という二本立てだった。その結果は期待の持てるものであったため、私はヘイ氏に、その症例について詳細な報告書を作成するよう依頼した。
報告書には、治療全体の経過を記載してもらい、この新しい固定空気の応用がまったく安全であることを世に示し、またそれが私の予想通りの効果を発揮したかどうかについて、一般の人々が判断できる機会を提供したいと考えた。そして、この応用法は新しく、かつ有望なものであるため、私は彼からの手紙をこの論文の付録として添付することにした。
　私がさまざまな種類の空気の性質についての研究を始めたとき、私は友人であるパーシヴァル博士（Ｄｒ．　Ｐｅｒｃｉｖａｌ）に、それらの空気の医学的用途に注目してもらうよう依頼した。というのも、彼は自然哲学（当時の科学）と医学の両方に深い知識を有しており、この目的において非常に優れた適性を持っていると私は確信していたからだ。彼の観察の成果についても、この論文の付録に記載する予定である。